2024.06.26
愛犬がご飯を食べない、元気がない、嘔吐や下痢をする…。そんな症状をみせたら、もしかしたらそれは胆嚢粘液嚢腫という病気かもしれません。胆嚢粘液嚢腫は、犬にとって命に関わることもある怖い病気ですが、早期発見・早期治療で多くの場合、完治することができます。
今回は、犬の胆嚢粘液嚢腫について詳しくお伝えします。
■目次
1.胆嚢粘液嚢腫とは?
2.症状
3.原因
4.診断方法
5.治療方法
6.予防法やご家庭での注意点
7.まとめ
胆嚢は、肝臓に隣接する袋状の臓器で、脂肪の消化を助ける「胆汁」を貯蔵する役割を担っています。
胆嚢粘液嚢腫は、本来サラサラの液体である胆汁が、何らかの原因で粘液性の物質(ムチン)と混ざり、胆汁がゼリー状に固くなったり、胆嚢内に蓄積したりすることで、胆嚢内に粘液が異常に蓄積してしまうことで起こります。
胆嚢粘液嚢腫には特徴的な症状がなく、健康診断や他の病気の検査時に偶然発見されることが多いです。しかし、進行するにつれて、以下のような症状が現れます。
・食欲不振
・元気がない
・嘔吐
・下痢
・腹痛
・黄疸
さらに状態が悪化すると、胆嚢が破裂し、腹膜炎を引き起こして非常に危険な状態に陥ります。
胆嚢粘液嚢腫の原因は完全には解明されていませんが、以下のような要因が関係していると考えられています。
・脂質代謝異常や高脂血症
脂質代謝異常や高脂血症になると、胆汁中にコレステロールや中性脂肪などの脂質が多くなり、粘度が増加します。これがムチンの過剰分泌を招き、胆嚢粘液嚢腫の発症リスクを高める可能性があります。
特に、シェットランド・シープドッグ、シー・ズー、アメリカン・コッカー・スパニエル、ミニチュア・シュナウザーなどの脂質代謝異常を起こしやすい犬種は、発症リスクが高いと考えられています。
・内分泌疾患
副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患は、ホルモンバランスの乱れを引き起こし、胆汁の分泌や粘度の調節に影響を与える可能性があります。
・その他
胆石症や胆泥症、加齢、生活環境なども、胆嚢粘液嚢腫の発症に影響を与える可能性があると考えられています。
診断には「超音波検査」が最も有効です。通常の胆汁はサラサラしていますが、胆嚢粘液嚢腫の場合、胆嚢内の物質が粘り気を持ち、胆嚢の壁にくっついて糸を引くように見えます。この様子がキウイフルーツの断面に似ていることから、超音波検査で「キウイフルーツ様」と呼ばれるような特徴的な像が確認できれば、胆嚢粘液嚢腫と診断することが可能です。
また、血液検査で肝臓の酵素が高くなっていることも、診断の一助になります。
胆嚢粘液嚢腫の治療方法は、症状の程度や犬の状態によって異なります。
・内科的治療
軽度の場合、利胆薬 (ウルソサンなど) を投与して、胆汁の流れを改善する治療を行います。また、食事療法として、低脂肪食を与えることも有効ですが、内科療法だけでの完治は難しいケースがほとんどです。
・外科的治療
重度の場合、胆嚢摘出術を行います。手術によって根治が望めますが、術後の合併症(膵炎や腹膜炎など)が起こる可能性があります。
当院でも手術が可能ですので、疑問点などございましたらお気軽にご相談ください。
原因がはっきりわかっていないため明確な予防法はありませんが、肥満や高脂血症がリスク要因とされているため、高カロリーや高脂肪の食事を避け、体重管理を行うようにしましょう。
この病気は命に関わることもありますが、普段は症状が出ないまま進行することが多いです。だからこそ、早期発見が大切です。定期的に健康診断を受け、血液検査や超音波検査で早期に見つけるようにしましょう。
胆嚢粘液嚢腫は外見からは判断しにくいことが多いですが、胆嚢が破裂するまで進行すると急激に症状が悪化し、命の危険があります。早期に発見できれば、必ずしも手術が必要な病気ではないので、定期的に健康診断を行って胆嚢の状態をチェックしましょう。
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