2024.06.26
犬の会陰ヘルニアとは、肛門周辺の筋肉が弱くなることで隙間ができ、その隙間(ヘルニア孔)から臓器(直腸、膀胱、前立腺、脂肪など)が飛び出す病気です。放置すれば命に関わる可能性もあり、再発のリスクも高いことから、飼い主様は愛犬の健康を守るために、会陰ヘルニアについて正しく理解しておくことが重要です。
今回は、犬の会陰ヘルニアについて詳しくお伝えします。
■目次
1.症状
2.原因
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
会陰ヘルニアの症状は、飛び出ている臓器によって異なりますが、以下のようなものが挙げられます。
・肛門周囲の腫れ
・排便困難
・便秘
・排尿困難
・血尿
・患部を舐めたり、噛んだりする
また、腸が飛び出した場合は、腸管が圧迫されて血流が悪くなり、腸管の壊死や腸閉塞につながる可能性があります。腸閉塞になると、嘔吐、下痢、血便、元気消失などの症状が現れ、命に関わる危険な状態に至ってしまうこともあります。
明確な原因は解明されていませんが、以下のような要因が関係していると考えられています。
・ホルモン
去勢していないオス犬の性ホルモン(テストステロン)が、会陰部の筋肉を弱める可能性があります。
・加齢
加齢とともに筋肉が弱くなり、ヘルニアが発生しやすくなります。
・遺伝
ミニチュア・ダックスフンド、ウェルシュコーギー、ボストンテリア、ペキニーズなどの小型犬種で好発することが知られていますが、未去勢のオス犬であればどの犬種でも起こりうる病気です。
・お尻周りに強い圧がかかる
肥満や慢性的な咳、吠え、便秘などが原因で、お尻周りに強い圧がかかり、ヘルニアが発生しやすくなります。
・病気
腫瘍や前立腺肥大などの病気が原因で、会陰ヘルニアが発生しやすくなります。
会陰ヘルニアの診断には、以下の方法があります。
・触診
肛門周囲の触診と直腸検査で腫れがないかどうかを確認します。
・レントゲン検査
レントゲン検査で、飛び出した臓器を影として確認することができます。
・超音波検査
超音波検査で、飛び出ている臓器の状態をより詳しく確認することができます。
会陰ヘルニアの治療法は、手術が基本です。手術では、飛び出している臓器を元の位置に戻し、ヘルニア孔を縫合します。筋肉が弱っている場合は、メッシュと呼ばれる人工物を使用して、ヘルニア孔を補強することもあります。
また、再度臓器がでていかないように臓器をお腹の中に固定する手術を併用することもあります。去勢をしていない場合は、再発防止のために去勢手術も同時に行います。
会陰ヘルニアの治療は術後のケアも重要です。手術後は痛みや違和感から排便時に強くいきむことができないため、便が出やすくなるようにする食事療法が必要です。
当院でも手術が可能ですので、疑問点などがございましたらお気軽にご相談ください。
去勢していないオス犬に多くみられるため、「去勢」が一番の予防方法です。また、フードを繊維質の多いものに変更し、便が出やすい状態にすることや、定期的な健康診断も重要です。
また、日常的に愛犬の肛門周辺の状態をチェックし、異常が見られたら早めに動物病院を受診することも大切です。
◼️当院の去勢手術について、詳しくは下記をご覧ください
犬の去勢手術をする意味と重要性について┃当院では手術後ストレスを最小限に抑える術式を採用
会陰ヘルニアはあまり頻繁に見られる疾患ではありませんが、放っておくと命に関わる可能性があります。治療後も再発のリスクがあるため、定期的なチェックとケアが欠かせません。去勢手術や適切な食事管理、定期健診を行い、少しでも異常を感じたら、早めに当院にご相談ください。
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