2024.07.26
犬の膝蓋骨脱臼、通称「パテラ」は、特に小型犬に多く見られる関節疾患です。膝蓋骨(膝のお皿)が正常な位置から外れてしまう状態を指し、放置すると関節炎を発症して次第に痛みが強くなり日常生活に支障をきたします。特にチワワ、ポメラニアン、トイ・プードル、ヨークシャー・テリアなどに多く発生しますが、大型犬でもみられるため注意が必要です。
今回は、犬の膝蓋骨(パテラ)脱臼について詳しくお伝えします。
■目次
1.症状
2.原因
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
初期の段階では、時々足を挙げる程度で、痛みなどの症状はみられないことが多いですが、進行していくと痛みが出るようになり、以下のような症状が現れます。
・歩行時の跛行(びっこを引くこと)
・足を後ろに伸ばすような動きをする
・膝関節の不安定感
・歩行中に突然足を持ち上げる(スキップする動作)
また、膝蓋骨脱臼に伴い、前十字靭帯断裂と呼ばれる整形疾患を発症することもあるため早期に治療を開始することが重要です。
膝蓋骨脱臼の原因には、先天性と後天性のものがあります。
・先天性
遺伝的な要因が関与しており、膝の構造が正常でないために起こります。特に小型犬(チワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアンなど)に多く見られます。
・後天性
高所からの落下や事故による損傷、肥満などが原因となります。
また、膝蓋骨脱臼には、「内方脱臼」と「外方脱臼」の2つのタイプがあります。
内方脱臼とは、膝蓋骨が内側に外れる状態を指し、小型犬に多く見られます。一方、外方脱臼は、膝蓋骨が外側に外れる状態を指し、大型犬や老犬にみられることが多いです。
膝蓋骨脱臼の診断は、以下の方法で行われます。
・身体検査
膝関節を触り、膝蓋骨の位置、動き、周囲の腫れや炎症の有無を確認します。
・レントゲン検査
膝関節の構造を観察し、関節の損傷や変形の有無を確認します。
・MRIやCTスキャン
場合によっては、より詳細な画像診断が行われることもあります。
軽度の脱臼には、以下の内科的な治療を行います。
・抗炎症薬の投与
・体重管理
・運動制限
一方、重度の脱臼や再発を繰り返す場合には、外科手術を行う必要があります。当院でも、手術の対応をしておりますが、なんでもかんでも手術というわけではなく、症状のグレードに合わせて最適なケアを提案しています。
また、運動療法や理学療法を行うリハビリテーションも、関節の安定性を向上させるために重要です。
膝蓋骨脱臼の予防や再発防止には、適切な体重管理が重要です。
肥満は膝関節に余計な負担をかけるため、日頃からおやつの与えすぎには気をつけ、適度な運動を心がけるようにしましょう。
また、家の中がフローリングであればマットなどを敷く、足裏の毛はこまめにカットするなどをして、愛犬が滑って膝に負担をかけないよう気をつけましょう。
さらに、定期的に動物病院で検診を受け、膝の状態の確認を行うとより安心です。
犬の膝蓋骨脱臼は、特に小型犬に多く見られる病気で、飼い主様が気づかないうちに進行し、歩行に異常が出ることがあります。体重管理や生活環境の工夫を行えば、症状の悪化や発症をある程度予防することが可能です。日頃から愛犬の歩き方に注意を払い、半年から1年に一度は獣医師による健康診断を受けることをお勧めします。
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