スタッフブログ
2026.04.23
「最近、なんとなく足をかばっている気がする」「散歩の途中で立ち止まることが増えた」こうした変化が見られると、飼い主様としては「少しひねったのかな」「年齢の影響かもしれない」と考えることも多いのではないでしょうか。
実際、関節や筋肉の痛み、軽いけがで似たような様子が見られることは少なくありません。
ただ、その中には骨の腫瘍、つまり骨にできるがんが隠れていることがあります。その代表が「骨肉腫」です。
骨肉腫は、犬で比較的みられる骨のがんで、進行が早く、強い痛みを伴いやすい病気です。猫では犬ほど多くはありませんが、まれに発生することがあります。
この記事では、犬や猫の骨肉腫とはどのような病気なのか、どんな症状に気をつけたいのか、診断や治療の流れ、そして診断後の暮らしをどう支えていくかについて解説します。
■目次
1.骨肉腫とはどんな病気?犬猫に多い?
2.骨肉腫でまず気づきやすい症状
3.早めの受診をおすすめしたい“危険なサイン”
4.診断の流れと必要な検査
5.主な治療法とその選択肢
6.診断後の生活とQOLを支えるケア
7.まとめ
骨肉腫は、骨をつくる細胞ががん化し、骨を壊しながら増えていく病気です。
骨の内部で異常な細胞が増えることで、骨がもろくなったり、強い炎症や痛みを起こしたりします。
特に犬では、前足や後ろ足の長い骨にできることが多く、大型犬や超大型犬で発生しやすい傾向があります。原因はまだはっきりとは解明されていないものの、こうした発生傾向から、体の大きさや体質、遺伝的な背景などが関わっていると考えられています。
一方、猫の骨肉腫は犬より少なく、発生頻度は比較的まれです。ただし、まれだからといって安心はできず、足の痛みや腫れが続く場合には注意が必要です。
この病気がやっかいなのは、局所で骨を壊して痛みを出すだけでなく、ほかの場所へ広がる「転移」のリスクがあることです。
また、骨肉腫は初期には「少し足をかばう」「触ると嫌がる」程度の変化しか出ないこともあります。そのため、飼い主様が異変に気づいて受診されたときには、すでにある程度進行しているケースも少なくありません。
骨肉腫でよくみられるのは、足の痛みや歩き方の変化です。たとえば、次のような様子が見られます。
・片足をかばうように歩く
・足を地面につけたがらない
・散歩を嫌がる、途中で座り込む
・患部を触ると嫌がる、怒る
・足の一部が腫れて見える
こうした症状は、ねんざや関節炎、加齢による運動器の変化でも見られるため、最初は骨肉腫と結びつかないことが多いです。
「年齢のせいかな」「どこかひねっただけかも」と様子を見がちですが、数日たっても改善しない、むしろ強くなってくる場合は注意が必要です。
足の違和感があるからといって、すべてが今すぐの緊急受診というわけではありません。ただし、次のような様子があれば、なるべく早めに動物病院へご相談ください。
・強い痛みで触れない
・急に足を全く使えなくなった
・腫れがはっきりしている
・鳴く、震える、眠れないほど痛がる
・元気や食欲まで落ちてきた
骨肉腫では、骨の中で病変が進むにつれて痛みが強くなり、ある日突然骨が折れてしまうことがあります。これは「病的骨折」と呼ばれ、通常なら折れにくいような動きでも起こってしまうのが特徴です。
特に、突然強い痛みが出た場合は、無理に歩かせず、できるだけ安静にした状態で受診することが大切です。
骨肉腫が疑われるときは、まず問診と身体検査で、どこに痛みがあるのか、腫れはあるか、ほかの病気の可能性はないかを確認します。そのうえで、診断の中心になるのが画像検査です。
・レントゲン検査
まず行われることが多いのはレントゲン検査です。レントゲンでは、骨が溶けているように見える部分や、逆に異常な骨の増え方が見えることがあり、骨肉腫を疑う重要な手がかりになります。
・CT検査
さらに詳しく病変の広がりを確認したり、肺への転移がないかを調べたりするために、CT検査が検討されることもあります。CTはより立体的に状態を把握できる検査ですが、実施には設備や麻酔が必要になるため、必要に応じて連携施設をご案内する場合があります。
・生検・病理検査
確定診断のためには、病変部分から細胞や組織を採取して調べる検査、いわゆる生検や病理検査が行われることがあります。これは「本当にがんなのか」「どのタイプの腫瘍なのか」を確認するための大切な検査です。
・血液検査
血液検査などで全身状態を確認し、麻酔や手術、抗がん剤治療に耐えられる体力があるかを評価していきます。
骨肉腫の治療では「痛みの強い骨の病変にどう対応するか」と「転移のリスクにどう向き合うか」の両方を考える必要があります。
どの方法がよいかは、年齢、持病、性格、現在の痛みの強さ、ご家族が何を大切にしたいかによって変わります。
・外科手術(断脚)
四肢にできた骨肉腫では、病変のある足を切除する手術(断脚)が治療の選択肢になります。局所の強い痛みを取り除くという意味では、もっとも効果的な治療のひとつです。
「足を取るなんてかわいそう」と感じられるのはごく自然なことですし、実際に手術を前に迷われる飼い主様はとても多くいらっしゃいます。
ただ、骨肉腫では患部そのものが強い痛みの原因になっているため、手術後に「表情が明るくなった」「食欲が戻ってきた」「思った以上にしっかり歩けた」と感じられるケースも多くあります。犬は三本足でも上手に生活に適応する子が多く、猫も性格や体格によっては穏やかに過ごせる場合があります。
一方で、すべての犬猫に適しているわけではありません。重い心臓病や神経の病気がある場合、もともと他の足にも強い負担がかかっている場合、極端に体力が落ちている場合などには、実施について慎重な検討が必要になります。
・抗がん剤治療(化学療法)
手術だけでは、目に見えない小さな転移まで防ぎきれない可能性があるため、転移の進行を抑える目的で抗がん剤治療を組み合わせることがあります。
抗がん剤という言葉に強い不安を持たれる飼い主様は多いですが、犬や猫のがん治療では、人の治療とは考え方が少し異なります。つらい副作用を無理に耐えながら治療を続けるのではなく、生活の質を保ちながら続けられるかを大切にしながら量や間隔を調整していくことが一般的です。
もちろん、副作用が全く出ないとは言えません。食欲低下、下痢、嘔吐、元気消失などが見られることもありますし、体質によって出方も異なります。そのため、治療の目的や期待できること、注意点を理解したうえで選ぶことが大切です。
・緩和的ケア(断脚しない選択)
年齢や体力、ほかの病気の状況によっては、手術や抗がん剤を行わず、痛みを和らげながら穏やかに過ごすことを優先する方法を選ぶこともあります。
鎮痛薬を中心に、必要に応じて痛みの伝わり方を抑える薬や、神経ブロックなどを組み合わせて、できるだけ苦痛を減らしていきます。
この選択は「何もしない」ということではありません。むしろ、その子が今つらいと感じていることを減らし、食べること、眠ること、家族と過ごすことを大切にする、前向きな医療のひとつです。
骨肉腫の治療には「正解がひとつだけある」わけではありません。
痛みをしっかり取ることを最優先にするのか、通院負担を減らしたいのか、できるだけ積極的な治療をしたいのか。飼い主様と犬猫それぞれにとって大切なことを整理しながら、一緒に決めていくことが何より大切です。
骨肉腫と診断されたあとに大切なのは、治療そのものだけでなく「毎日の暮らしをどう支えるか」です。とくに痛みが強い時期や、断脚後で体の使い方が変わった時期には、住環境の見直しが大きな助けになります。
まず意識したいのは、足元の安全です。フローリングで滑りやすい場所にはマットを敷き、段差の上り下りが多いところにはスロープやステップを用意するなどして、転倒しにくい環境を整えましょう。寝床は、体を休めやすく、なおかつ立ち上がりやすい位置と高さにしてあげると安心です。
食事では「きちんと食べられているか」「体重が大きく落ちていないか」がポイントになります。痛みや治療の影響で食欲が不安定になることもあるため、食べやすい形状にしたり、香りを立てたり、その子の好みに合わせた工夫を一緒に考えていきます。
また、断脚後や痛みがある程度落ち着いてきた段階では、無理のない範囲で体を動かすことが役立つ場合もあります。軽いリハビリや、筋肉のこわばりを和らげるケアが、生活のしやすさにつながることもありますが、自己判断で強く動かしすぎると逆効果になることもあります。どこまでならやってよいのか、何は避けたほうがよいのかは病状によって異なりますので、診察の際に確認しながら進めていきましょう。
骨肉腫は、痛みが強く、転移の心配もあるため、診断を受けたときには大きなショックを受ける飼い主様がほとんどです。
それでも、その時点で「もう選べる道がない」というわけではありません。
手術を目指すのか、抗がん剤治療を組み合わせるのか、あるいは痛みをしっかり和らげながら穏やかな時間を大切にするのか。その子の年齢や体調、性格、ご家族が大事にしたいことによって、選択肢や向き合い方は変わってきます。
大切なのは「どれが正解か」を一つだけ探すことではなく「うちの子にとって何がいちばん良いか」を一緒に考えていくことです。
足をかばう、痛がる、腫れがあるといった変化が続くときは、どうか「もう少し様子を見ても大丈夫かな」と抱え込まず、早めにご相談ください。状況を早く把握できるほど、その子に合わせた治療やケアの選択肢が広がることがあります。
◼︎関連する記事はこちら
愛犬が足をかばう時の病気と対策|整形外科疾患の判断ポイント
犬の歩き方がいつもと違う?|考えられる病気と応急処置、緊急度別の対応法
猫が高いところに登らないのはなぜ?|関節の不調サインと家庭でできる対策
京都市左京区 北山駅から徒歩5分、松ヶ崎徒歩7分 京都北山動物病院
℡:075-744-6188