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2026.04.23
「昨日まで普通に歩いていたのに、今日は後ろ足がふらついている」「ソファに上がらなくなった」「抱っこするとキャンと鳴くようになった」こうした変化があると、飼い主様はとても驚かれると思います。
犬の椎間板ヘルニアは、背骨の間でクッションの役割をしている椎間板が飛び出し、神経(脊髄)を圧迫してしまう病気です。痛みだけで済むこともあれば、後ろ足が動かしにくくなったり、重度では立てなくなったりすることもあります。 
ただし、椎間板ヘルニアと聞いてすぐに「必ず手術になる」と考える必要はありません。
症状の重さや進行の速さ、神経学的検査の結果、画像検査で見える圧迫の程度などを総合して、内科治療でよいのか、手術を急いだほうがよいのかを判断していきます。 
この記事では、椎間板ヘルニアとはどんな病気か、どんな症状に注意すべきか、神経学的検査で何がわかるのか、そして手術適応をどう考えるかをわかりやすく解説します。
■目次
1.椎間板ヘルニアとは?
2.よくある症状と見逃しやすい初期サイン
3.すぐに受診を考えたいサイン
4.神経学的検査で何がわかる?
5.CTやMRIなどの画像診断の役割
6.手術が必要かどうかの判断基準
7.手術内容とリスク
8.術後の管理とご家庭でのサポート
9.再発予防と日常でできる工夫
10.まとめ
背骨は、いくつもの骨が連なってできています。その骨と骨の間には、衝撃をやわらげるクッションのような椎間板があります。
椎間板ヘルニアは、この椎間板の一部が飛び出して脊髄や神経を圧迫し、痛みや麻痺などの症状を引き起こす病気です。犬では特に、胸から腰にかけての部位で多く見られます。
発症しやすい犬種としては、次のような子がよく知られています。
・ダックスフンド
・コーギー
・ペキニーズ
・ビーグル など
これらの犬種では椎間板が若いうちから変性しやすく、ある日突然、痛みや歩き方の異変として現れることがあります。
ただし、椎間板ヘルニアは特定の犬種だけの病気ではありません。小型犬だけでなく大型犬でも起こることがあり、発生部位によっては首の痛みや前足の異常として気づかれることもあります。
椎間板ヘルニアの症状は、痛みだけの軽い段階から、歩行困難、麻痺まで幅があります。
初期には「少し動きたがらない」「段差を嫌がる」程度で始まることもあり、年齢の変化と見分けがつきにくいことがあります。
日常の中で見られやすいサインとしては、次のようなものがあります。
・後ろ足がふらつく
・足先をすって歩く
・足を引きずる
・散歩に行きたがらない、途中で座り込む
・ジャンプや段差を避ける
・抱っこすると痛がる、鳴く
・背中に触られるのを嫌がる
こうした変化は、神経に負担がかかっているサインの可能性があります。
次のような状態は緊急性が高い可能性があります。
・急に立てなくなった/歩けなくなった
・後ろ足をほとんど動かせない
・排尿しづらそう、失禁がある
・強い痛みで震える、落ち着かない
・足先をつねっても反応が乏しいように見える
重症例では、発症から治療までの時間が回復に影響することがあります。気になる場合は、できるだけ早めに動物病院を受診してください。
椎間板ヘルニアの診察では、単に「痛そう」「歩きにくそう」と見るだけではなく、神経学的検査を行い「どの部位に」「どの程度の障害があるか」を判断します。
検査では、たとえば次のようなことを確認します。
・歩き方の観察
・足を返したときに元に戻せるか(姿勢反応)
・膝や足の反射
・背骨を触ったときの痛みの有無
こうした検査を組み合わせることで、
・障害が首に近いのか
・胸腰部なのか
・腰より後ろなのか
といった部位の見当をつけ、重症度の判断にもつなげます。
飼い主様からすると「少し触ったり歩かせたりするだけで、そんなに分かるの?」と思われるかもしれません。しかし、この検査は診断の土台になります。画像だけではなく、実際にどのくらい神経の機能が保たれているかを把握することで、手術の必要性や緊急度を考えやすくなるからです。
レントゲン検査は、背骨全体の形や骨の変化を確認するのに役立ちます。
ただし、飛び出した椎間板そのものや脊髄の圧迫の程度を正確に評価するには限界があります。
そのため、椎間板ヘルニアが強く疑われる場合には、CTやMRIなどの詳しい画像検査が必要になります。
MRIは、脊髄や椎間板などの「やわらかい組織」を詳しく見るのに適しており、神経がどの程度圧迫されているかを把握しやすい検査です。
一方、CTは骨の構造を確認しやすく、病変の位置や状態を把握するうえで役立つことがあります。
これらの検査は、一般的に全身麻酔下で行われます。特に手術を検討する際には「どの椎間板が問題を起こしているのか」を特定するために重要な役割を果たします。
つまり、まず神経学的検査で「どのあたりに異常がありそうか」を推定し、そのうえでCTやMRIによって「実際にどの部位で、どの程度の圧迫が起きているか」を確認していく流れになります。こうすることで、治療方針をより正確に決めやすくなります。
椎間板ヘルニアで手術が必要かどうかは「ヘルニアだから即手術」と単純に決まるものではありません。
実際には、症状の重さ、進行の速さ、神経学的検査の結果、画像検査での圧迫の程度、発症からどれくらい時間がたっているか、全身状態などを総合して判断します。
比較的軽い、痛みが中心の段階や、まだしっかり歩ける段階では、まず厳密な安静と痛み止めなどの内科治療から始めることがあります。軽度から中等度では、状態を見ながらリハビリや生活管理を組み合わせて回復を目指すこともあります。
一方で、次のような場合は早期手術が検討されます。
・自力で立てない
・歩けない
・神経機能の低下がはっきりしている
・症状が急速に進んでいる
特に重度では時間的な緊急性が高くなるため、早めの判断が重要です。
手術では、全身麻酔をかけたうえで、問題となっている背骨の部位にアプローチし、脊髄を圧迫している椎間板物質を取り除きます。
これにより、神経への圧迫を減らし、痛みの改善や機能回復を目指します。
手術の具体的な方法は、病変の位置やタイプによって異なります。
もちろん、手術にはリスクもあります。
事前に理解しておきたい点としては、次のようなものがあります。
・全身麻酔の負担
・出血
・感染
・期待したほど神経機能が戻らない可能性
・再発の可能性
また、手術が無事に終わっても、すぐに元通りの歩き方に戻るとは限りません。術後の管理やリハビリが回復に大きく関わります。
入院期間も、症状の重さや回復の程度によって変わります。軽症なら比較的短期間で退院できることもありますが、重症例では排尿の補助やリハビリが必要となり、入院が長くなることもあります。
退院後は「手術が終わったから安心」ではなく、ご家庭での過ごし方がとても大切になります。
決められた期間、しっかり安静を守ることが重要です。
元気が出てくると動きたがる犬も多いですが、再び背中に負担がかかると回復を妨げることがあります。
排尿の補助が必要になることがあります。自分で排尿しにくい場合は補助の方法を確認し、皮膚トラブルや尿もれにも注意します。
寝たきりに近い状態では、床ずれを防ぐための体位変換や寝床の工夫も欠かせません。
ご家庭では、次のような環境調整が役立ちます。
・フローリングにマットを敷く
・ソファやベッドへの上り下りを避ける
・段差を減らす
抱っこをするときは、胸と腰を同時に支えて、背中にひねりや無理な負担がかからないようにしましょう。
回復段階に応じて、リハビリが必要になることがあります。
マッサージや関節をやさしく動かす運動、歩行練習などを、その子の状態に合わせて無理なく進めていくことが大切です。
どのタイミングでどの程度動かしてよいかは症例ごとに異なるため、自己判断で無理に歩かせるのではなく、診察時の指示に合わせて進めることが重要です。
椎間板ヘルニアは、治療後も再発や別の部位での発症に注意が必要です。
そのため、日頃から背中に強い負担をかけにくい生活を意識することが大切です。
具体的には、
・急なジャンプを減らす
・高い段差の上り下りを避ける
・滑りやすい床を見直す
・適正体重を保つ
といったことが、日常で取り組みやすい予防策になります。
体重が増えると背骨や関節への負担が大きくなりやすいため、食事量やおやつの見直しも役立ちます。
また「いつもより抱っこを嫌がる」「散歩の途中で止まる」といった小さな変化を見逃さず、早めに相談することが、重症化の予防につながることがあります。
犬の椎間板ヘルニアは、痛みだけで済む軽い段階から、歩行困難や麻痺を伴う重い段階まで幅のある病気です。
だからこそ「少し様子を見よう」と長く迷うのではなく、今どの程度の神経障害が起きているのかを正しく見極めることが大切です。
神経学的検査と必要に応じた画像検査を組み合わせることで、内科治療が適しているのか、手術を早めに検討したほうがよいのかを判断しやすくなります。
何を優先するかは、犬の年齢や性格、現在の状態、ご家族のお気持ちによっても変わります。
大切なのは「手術をするかしないか」だけを急いで決めることではなく、愛犬にとって今何が最善かを整理していくことです。
愛犬に気になる変化があれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。
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