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2025.07.23
愛犬の出産は、飼い主様にとっても特別で感動的な瞬間ですよね。しかし、すべてが順調に進むとは限らず、時には、母犬や子犬の命を守るために、医療的な処置が必要になることもあります。その一つが「帝王切開」です。
今回は、帝王切開が必要になるケースや手術の流れについて詳しくご説明します。いざという時に落ち着いて対応できるよう、事前に正しい知識を身につけておきましょう。
■目次
1.犬の帝王切開が必要となるケース
2.帝王切開が必要になることが多い犬種
3.帝王切開の手術の流れ
4.術後のケアとリスク
5.よくある質問(Q&A)
6.まとめ
帝王切開は、自然分娩が難しい場合に行われる大切な救命措置です。母犬や子犬の安全を守るために、獣医師が状況を判断し、適切なタイミングで実施されます。
以下のようなケースでは、帝王切開が選択されることがあります。
犬種によっては、骨盤の構造が自然分娩に適していないことがあります。特にフレンチブルドッグやパグなどの短頭種は骨盤が狭く胎児が産道を通りにくいため、帝王切開が必要になることが多いです。
胎児のサイズが平均より大きい場合、自然分娩では母犬や胎児に大きな負担がかかります。このような場合、獣医師が安全を考慮し、帝王切開を推奨することがあります。
出産の途中で分娩が止まってしまう「分娩停止」や、陣痛が弱く出産が進まない「微弱陣痛」の場合も、帝王切開が必要になることがあります。特に、長時間の難産は母犬や子犬の健康に影響を及ぼすため、早めの判断と対応が重要になります。
胎児が逆子の場合や、複数の胎児が同時に骨盤に詰まってしまう場合など、自然分娩が難しいケースでは帝王切開が選択されます。
以下の犬種は、帝王切開が必要となるケースが比較的多いとされています。
・フレンチブルドッグ
・パグ
・チワワ
・シーズー
・ボストンテリア
これらの犬種は、骨盤が狭いだけでなく、胎児の頭が大きい傾向があるため、自然分娩が難しくなることが多いといわれています。
特に短頭種は呼吸器の構造上、長時間の分娩によるストレスが負担になることもあり、注意が必要です。
帝王切開を安全に行うためには、事前の準備がとても大切です。ここでは、手術の流れをご説明します。
手術の前に、母犬の健康状態を確認するための検査を行います。
・血液検査:臓器の機能や感染症の有無を調べます。
・レントゲン・超音波検査:胎児の数や状態を確認します。
これらの検査結果をもとに、手術が安全に行えるかを判断します。
飼い主様には、以下の準備をお願いすることがあります。
・食事管理:麻酔による嘔吐や誤嚥を防ぐため、手術の6〜12時間前から食事を控えていただくのが一般的です。
ただし、急な難産などで緊急の帝王切開が必要になる場合は、必ずしもこの限りではありません。その際は、動物病院の判断により、食事をとっていても安全に配慮した処置が行われますので、ご安心ください。
・入院準備:手術後、母犬と子犬が落ち着いて過ごせるように、必要に応じて寝床やケージの準備をご相談させていただくことがあります。
手術は、次の手順で進められます。
・麻酔の導入:母犬が痛みを感じないように、全身麻酔をかけます。
・切開と胎児の取り出し:腹部を切開し、子宮から胎児を一頭ずつ取り出します。
・子犬のケア:取り出した子犬の呼吸を促し、健康状態を確認します。
・母犬の縫合:子宮と腹部を丁寧に縫合し、手術を終えます。
手術時間は、麻酔の導入を含め約1〜2時間です。
手術後は、母犬が麻酔から覚めるのを待ちます。意識が完全に戻った後、子犬に授乳を始められるようにサポートします。
帝王切開は、母犬と子犬の命を守るために必要な手術です。しかし、手術が無事に終わった後も、母犬と子犬が元気に回復できるように適切な術後ケアを行うことがとても大切です。
手術後の母犬は体力が低下しているため、十分な休息と栄養補給が欠かせません。以下のポイントに注意しながら、母犬をサポートしましょう。
・安静を確保する:静かな場所で休ませ、ストレスをできるだけ減らします。
・食事と水分の管理:術後24時間以内は、消化に優しいフードを少量ずつ与えます。
・傷口のチェック:傷口が清潔かを確認し、腫れや出血がないか毎日観察します。
・異常のサインに注意する:発熱、食欲不振、傷口の腫れや膿が見られる場合は、すぐに動物病院へ相談してください。
新生児の子犬はとても繊細なため、こまめに様子を見守ることが大切です。
・授乳の確認:子犬がしっかりと母乳を飲めているか確認してください。体力が弱い子犬は、補助的に哺乳が必要になることもあります。
・体温管理:新生児は体温調節が未熟なため、室温を約30℃に保つようにしましょう。
・成長の記録:体重を毎日測定し、順調に成長しているか確認します。
母犬の回復期間は個体差がありますが、一般的には2〜3週間程度です。無理をさせず、以下の点に気をつけながら優しく見守りましょう。
・歩行時の様子を観察する:歩き方に違和感がある場合は、痛みが残っている可能性があります。
・母乳の分泌を確認する:母乳が十分に出ていない場合は、獣医師に相談してください。
・術後健診を受ける:手術後1週間以内に、動物病院での診察を受けましょう。
A.帝王切開は全身麻酔を伴う手術のため、一定のリスクがあります。
しかし、術前検査や適切な管理を行うことで、安全に実施することが可能です。
当院では、万全の体制で手術を行い、術後のフォローも丁寧に対応しております。
A.多くの場合、一度帝王切開を受けた犬は、次回の出産でも同様の手術が推奨されます。
特に骨盤が狭い犬種や、難産の経験がある場合は、安全のため計画的に帝王切開を行うことが一般的です。
A.ペット保険の適用可否は、保険会社や契約内容によって異なります。
帝王切開を含む妊娠・出産に関わる費用は、保険の対象外となることが多いため、事前に保険会社へ確認することをおすすめします。
帝王切開は、愛犬とその子犬を守るために大切な手術です。術後のケアをしっかり行うことで、母犬と子犬が健やかに過ごせるようサポートできます。
当院では、帝王切開に関する術前のご相談から術後のフォローまで、飼い主様と愛犬に寄り添ったサポートを行っております。
ご不安なことやご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
京都市左京区 北山駅から徒歩5分、松ヶ崎徒歩7分 京都北山動物病院
℡:075-744-6188