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2025.06.25
愛犬や愛猫が元気に走り回る姿を見ていると、骨折はあまり身近に感じないかもしれません。
しかし、ちょっとした段差の踏み外しや遊んでいる最中の転倒など、思いがけないタイミングで骨折してしまうこともあります。
また、骨折は適切な処置をしないと痛みが長引くだけでなく、歩行障害などの後遺症につながる可能性もあるため、早めの対応がとても重要です。
今回は、骨折に関する誤解を解消しながら、万が一のときの初期対応や、日常生活で気をつけたい予防のポイントを解説します。
■目次
1.犬と猫の骨折|5つの誤解
2.骨折と診断されてからの「最初の48時間」完全ガイド
3.3つのケーススタディ|骨折リスクと対策
4.まとめ
犬や猫の骨折については、正しく理解されていないことも多く、思い込みから適切な対応が遅れてしまうこともあります。ここでは、特に多くの飼い主様が誤解しやすい5つのポイントを解説します。
これはよくある誤解のひとつです。実際には、犬や猫は骨折しても大きな声を出さず、静かに耐えてしまうことがあります。特に猫は痛みに対する我慢強さがあり、飼い主様が気づかないまま時間が経過してしまうケースも少なくありません。
そのため、普段と違う歩き方をしていないか、特定の足をかばっていないかをよく観察しましょう。また、骨折した部分に触れると嫌がることが多いため、愛犬や愛猫の反応を注意深く確認することも大切です。
「体が大きい犬やボーダーコリーのように運動神経が良い犬は骨折しにくい」と思われがちですが、実はそうとは限りません。
確かに、運動能力の高い犬種は体の動かし方が上手ですが、骨折のリスクがゼロになるわけではありません。
特に、大型犬は骨が太い分、強い衝撃を受けると骨折が複雑になりやすい傾向があります。
一方、小型犬は骨が細く、わずかな衝撃でも骨折しやすい特徴があります。
そのため、犬種や体格に関わらず、段差や滑りやすい床など、骨折のリスクを減らす環境づくりが大切です。
猫はしなやかに動き、高いところから飛び降りるのも得意ですが、「体が柔らかいから骨折しない」というのは誤解です。実際には、高所からの落下や交通事故などで骨折するケースが少なくありません。
特に、尾・骨盤・肋骨は衝撃に弱く、強い力が加わると折れやすい部位です。窓やベランダからの転落は猫の骨折の原因としてよく見られるため、脱走防止対策をしっかり行いましょう。
「じっとしていれば、そのうち治るのでは?」と思うかもしれませんが、これは大きな間違いです。骨折した骨が自然に元通りになることはほとんどなく、適切な治療を受けないと骨がずれたまま癒合し、後遺症が残る可能性があります。
関節に負担がかかって他の部位にも悪影響を及ぼすこともあるため、骨折が疑われたらできるだけ早く動物病院を受診しましょう。
確かに、若い犬や猫は治癒力が高く、骨折の回復も早い傾向があります。しかし、「若いから放っておいても大丈夫」というわけではありません。
特に、成長期の骨折は「成長板」と呼ばれる骨の端の部分に影響を及ぼすことがあり、放置すると骨の変形や歩行障害につながることもあります。
また、間違った形で骨が癒合してしまうと、手術が必要になるケースもあります。
骨折の治療には適切な対応が欠かせませんが、特に診断後の最初の48時間は回復に向けてとても重要な時間です。
ここでは、動物病院での治療から自宅でのケアまで、最初の48時間にやるべきことを詳しく解説します。
◆診断
まず、動物病院でレントゲンや触診を行い、骨折の有無や状態を確認します。骨折にはさまざまな種類があり、それぞれ治療方法が異なります。
・単純骨折:骨が折れているものの、皮膚を突き破っていない状態。
・複雑骨折:骨が複数個所で折れ、ずれが生じている状態。
・開放骨折:骨が皮膚を突き破り、外部とつながってしまっている状態。(感染リスクが高いため、特に注意が必要です)
◆初期治療(動物病院での処置)
診断後は、骨折の状態に応じて以下のような初期治療が行われます。
・固定:骨折した部位を動かさないように、ギプスや添え木を使用して固定します。
・痛みの管理:鎮痛剤を投与し、痛みをできるだけ抑えます。
・感染予防:開放骨折の場合は抗生剤を処方し、感染を防ぎます。
・手術の準備:開放骨折や関節内骨折といった複雑な骨折の場合には、できるだけ早く手術の準備を進めます。
◆帰宅後の注意点
病院で処置を受けた後は、自宅での適切なケアが回復を左右します。帰宅後に気をつけるべきポイントを確認しましょう。
・運動制限をしっかり行う
骨折した部位を安静に保つためには、適切な運動制限が重要です。ケージやサークルを活用して行動範囲を制限し、特にジャンプや急な動きは避けましょう。無理な動きが加わると、回復が遅れたり悪化する可能性があります。
・床材の工夫
フローリングなど滑りやすい床は、骨折した部位に負担をかける原因になります。ラグやマットを敷いて、歩行時の負担を軽減しましょう。
・生活環境の見直し
ベッドやソファなどの高い場所には上らせないようにし、転倒や再骨折を防ぎます。必要であれば、スロープやステップを活用するのもよいでしょう。
◆観察と報告
骨折の治療は、病院での処置だけで終わるものではありません。日々の変化をしっかり観察し、異常があればすぐに獣医師に相談することが大切です。
以下のような症状が見られた場合は、すぐに動物病院へ連絡しましょう。
・痛みがひどくなっている(鳴き声が増える、患部をしきりに舐めるなど)
・腫れが悪化している
・食欲が極端に低下している
・ギプスや包帯がずれている、外れている
また、定期的な診察を受けて、骨の治癒の進行を確認することも重要です。
骨折は、日常のちょっとした出来事がきっかけで起こることがあります。ここでは、実際に起こりやすい3つのケースを紹介し、それぞれのリスクと対策を解説します。
◆リスク
高齢の犬は筋力や関節の柔軟性が低下しているため、階段の上り下りが難しくなることがあります。また、視力やバランス感覚の衰えによって足を踏み外すリスクも高くなります。
特に、夜間や暗い場所では階段の段差を見誤ることがあり、転落の危険が増します。
◆対策
・滑りにくい環境を作る
フローリングの階段は滑りやすく、足元が不安定になりがちです。滑り止めのマットやカーペットを敷くことで、足のグリップ力を高めましょう。
・階段へのアクセスを制限する
転落を防ぐために階段の上下にペット用のゲートを設置し、自由に出入りできないようにするのも効果的です。
・飼い主様のサポート
どうしても階段を使う必要がある場合は抱っこして移動するか、ハーネスを使用して安全にサポートすると安心です。
◆リスク
活発な若い猫は本能的に高い場所を好みますが、その分、転落事故のリスクも高くなります。特に、窓やベランダが開いていると、興味を引かれて外に出ようとし、そのまま落下してしまうこともあります。
また、室内でも棚や冷蔵庫の上などから飛び降りる際に、着地を誤って骨折するケースもあります。
◆対策
・窓やベランダの安全対策を徹底する
窓にはペット用の網やスクリーンを設置し、猫が外に出られないようにしましょう。また、ベランダへのドアはしっかり閉めて、出入りできないようにすることも重要です。
・室内で安全に高い場所を楽しめる環境を作る
猫は高い場所を好むため、キャットタワーや棚を設置し、安全な上り降りができる環境を整えましょう。これにより、窓や危険な場所への興味を減らすことができます。
・落下の衝撃を和らげる工夫
家具の下や猫がよく飛び降りる場所には、クッション性の高いラグやマットを敷くことで、着地の衝撃を軽減できます。
◆リスク
多頭飼育では、じゃれ合いがエスカレートして取っ組み合いになり、骨折してしまうケースがあります。特に、体格差のある犬や猫が一緒に遊ぶ場合は注意が必要です。
◆対策
・それぞれのペットに専用のスペースを確保する
食事や休む場所を分けることで、トラブルを未然に防ぐことができます。特に、新しく迎えたペットがいる場合は、慣れるまで徐々に距離を縮めるのが理想的です。
・遊びが激しくなりすぎないよう、適宜介入する
じゃれ合いがヒートアップしてきたら、一度落ち着かせるために別々の場所に移動させるなどの工夫が必要です。
・十分な運動とストレスケアを行う
エネルギーが有り余っていると、遊びが激しくなりがちです。日常的に適度な運動をさせたり、おもちゃで遊ばせたりすることで、ストレスを発散させましょう。
骨折は、愛犬や愛猫の生活に大きな影響を及ぼすケガのひとつです。痛みだけでなく、歩行障害などの後遺症につながることもあるため、何よりも予防が大切です。
そのためには、それぞれの生活スタイルや年齢、住環境に応じたリスクを理解し、適切な対策をとることが重要です。日頃から安全な環境を整えることで、大切な愛犬や愛猫を骨折のリスクから守ることができます。
しかし、どれだけ注意していても、思いがけない事故が起こることもあります。 万が一、「足を引きずっている」「痛がって動かない」など、骨折が疑われる場合は、できるだけ早く動物病院を受診することが最善の選択です。
当院では、骨折の診断や治療はもちろん、予防のためのアドバイスも行っています。 愛犬や愛猫の健康について気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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