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2026.05.25
愛犬に「断脚(足を切断する手術)」が必要だと告げられたら、どんな飼い主様も目の前が真っ暗になるような、大きなショックを受けられることと思います。
「3本脚で歩けるの?」「かわいそうな思いをさせるのではないか」そんな不安で胸がいっぱいになるのは、愛犬を大切におもっているからこその自然な感情です。
しかし、断脚手術は決して「諦め」の選択ではありません。激しい痛みや病気から愛犬を解放し、「再び元気に歩くための前向きな選択」でもあります。
今回は、断脚が必要になるケースから術後の生活、リハビリについて詳しく解説します。
■目次
1.犬の断脚術とは|どこをどのように切断するのか
2.どんなときに断脚が検討されるの?
3.手術に至るまでの検査と判断
4.術後の生活はどうなる?
5.リハビリの重要性
6.飼い主様の気持ちのケア
7.まとめ
断脚術では、病気やケガの場所、広がり、術後の歩きやすさなどをふまえて、切断する位置を慎重に判断します。
主な方法としては、以下のようなものがあります。
・前肢:肩甲骨ごと取り除く方法や、上腕の途中で切断する方法
・後肢:太ももの骨である大腿骨の途中で切断する方法や、骨盤の一部を含めて切断する方法
「少しでも長く足を残してあげたい」と思うのは、ご家族として自然なことです。
ただし、足の一部を残すことが、必ずしも術後の生活にとってよいとは限りません。残した部分が地面に擦れて傷ついたり、残った足の重みで歩行バランスを崩しやすくなったりすることがあるためです。
そのため、断脚術では「どれだけ足を残すか」だけでなく「術後に痛みなく、できるだけスムーズに動けるか」を重視して切断部位を決めます。
愛犬の病気の状態や体格、残された足への負担、今後の生活を総合的に考え、最も負担の少ない方法を検討していきます。
断脚手術は「もう方法がないから仕方なく行う手術」というより、強い痛みを取り除き、病気の進行や感染の広がりを抑え、生活の質を守るために検討される治療です。
主に、次のようなケースで選択肢になります。
🔶 腫瘍がある場合
骨肉腫や軟部組織肉腫など、脚に悪性腫瘍ができた場合に検討されることがあります。
腫瘍の種類や進行度によっては、強い痛みを伴ったり、骨折や転移のリスクがあったりします。そのため、痛みの緩和や腫瘍の切除を目的として、断脚が選択肢になることがあります。
🔶 重度の外傷がある場合
交通事故や落下事故などによって、複雑骨折や広い範囲の損傷が起きた場合に検討されます。
血流が途絶えて組織が壊死している、感染が広がっている、脚を残しても機能の回復が見込めないといった場合には、命を守るために断脚が必要になることがあります。
🔶 重度の神経麻痺や強い痛みがある場合
神経の損傷によって脚が動かない、感覚が戻らない、慢性的な痛みが続いている場合にも、断脚が選択肢になることがあります。
感覚のない脚を引きずって傷ができたり、自分の足を噛んでしまったりする場合は、感染や痛みを繰り返す原因になります。その子の生活の質を守るために、手術を検討することがあります。
🔶 先天的な異常がある場合
生まれつき脚の形や機能に異常があり、成長とともに変形が悪化する場合にも、断脚が選択肢になることがあります。
脚を残すことで歩行の妨げになったり、痛みやケガを繰り返したりする場合には、今後の生活を考えて手術を検討します。
断脚手術を検討する際は、「本当に手術が必要か」「ほかの治療方法はないか」「全身麻酔に耐えられる状態か」を多角的に評価します。
主に、次のような検査を組み合わせて判断します。
🔶 画像診断
レントゲン検査、CT検査、MRI検査などで、病変の場所や広がりを確認します。
腫瘍が疑われる場合は、骨や周囲の組織への広がりだけでなく、肺などに転移がないかを調べることもあります。また、外傷の場合は、骨折の状態や関節、周囲の組織への影響を確認します。
🔶 細胞診・組織検査
腫瘍が疑われる場合は、細胞診や生検を行い、病気の種類を調べます。
細胞診は、針で細胞を採取して確認する検査です。生検は、組織の一部を採取して詳しく調べる検査で、腫瘍の種類や悪性度を判断するために役立ちます。
筋肉や軟部組織の腫瘍が疑われる場合には、病変の一部を採取して検査することもあります。
🔶 全身状態のチェック
断脚手術は全身麻酔で行うため、手術前に体の状態を確認することが大切です。
血液検査では、貧血の有無や炎症、肝臓・腎臓の状態などを確認します。必要に応じて、心臓の検査や胸部レントゲン検査などを行い、麻酔や手術に伴うリスクを評価します。
これらの検査結果をもとに、手術の必要性や時期、術後の管理方法を慎重に検討します。
断脚手術を検討するとき、多くの飼い主様が一番心配されるのが「術後に普通に暮らせるのか」という点です。
結論から言うと、多くの犬は3本脚での生活に少しずつ適応していきます。もちろん、年齢、体格、体重、残された脚の状態によって回復のスピードは異なりますが、痛みが取り除かれることで、以前より動きやすくなる子もいます。
手術後は、痛みの管理をしっかり行いながら、傷口の状態や食欲、排泄、歩行の様子を確認します。
術後すぐは無理に動かすのではなく、まずは痛みを抑え、体を休ませることを優先します。その後、状態を見ながら少しずつ立ち上がりや歩行を確認していきます。
傷口が安定し、食欲や排泄に大きな問題がなく、3本脚での立ち上がりや短い移動ができるようになれば退院となります。
術後すぐは、立ち上がりや方向転換に戸惑うことがあります。
特にトイレでは、排尿・排便の姿勢が変わるため、最初はふらついたり、失敗したりすることがあります。床が滑ると転倒しやすいため、トイレ周りには滑りにくいマットを敷きましょう。必要に応じて、胴を支えるハーネスやタオルを使って介助します。
食事中も、体のバランスが取りにくいことがあります。食器台を使って高さを調整したり、滑らない場所で食べさせたりすると安定しやすくなります。
歩行については、最初から長い距離を歩かせる必要はありません。短い距離から始め、転ばずに立てる、数歩歩ける、方向転換できる、というように段階を踏んで慣らしていきます。
断脚後の生活では、残された脚や体幹に負担をかけすぎないよう、少しずつ体の使い方に慣れていくことが大切です。
犬は3本脚での生活に適応する力を持っていますが、手術前とは立ち方や歩き方のバランスが変わります。そのため、残された脚だけでなく、背中・腰・首まわりにも負担がかかりやすくなります。
リハビリでは、その子の状態に合わせて、次のような方法を行います。
・立つ、座るなどの基本動作の練習
・短時間の歩行練習
・関節の動きを保つ運動
・軽いマッサージ
・温熱療法
・レーザー治療
・バランス運動
・水中トレッドミルやプールなどの運動療法
ただし、リハビリは早く始めればよいというものではありません。傷口の状態、痛み、体力、歩行の安定性を確認しながら、適切なタイミングで始めることが大切です。
自宅では、獣医師の指示に従い、まずは短時間の歩行や立ち上がりの補助から始めます。
「元気そうだから」と急に散歩の距離を伸ばしたり、階段や段差を自由に使わせたりすると、残された脚や関節に負担がかかることがあります。
焦らず、愛犬の様子を見ながら少しずつできることを増やしていきましょう。
断脚手術を選択したあとも、「かわいそうなことをしてしまったのでは」「本当にこれでよかったのだろうか」と、気持ちが揺れる飼い主様は少なくありません。
断脚は大きな決断だからこそ、不安や迷いが残るのは自然なことです。
ただ、強い痛みや動きづらさがあった子では、手術によって痛みの原因が取り除かれ、表情や動きが明るくなることがあります。最初は戸惑いながらも、少しずつ3本脚での生活に慣れ、その子らしい毎日を取り戻していくケースもあります。
不安が強いときは、同じ経験をした飼い主様の体験談を読んでみるのも一つの方法です。3本脚で元気に過ごしている犬の姿を見ることで、術後の生活を前向きにイメージしやすくなるかもしれません。
ただし、回復のスピードや必要なケアは一頭ごとに異なります。インターネット上の情報だけで判断せず、不安なことがあれば、遠慮なく獣医師にご相談ください。
断脚手術は、決して「足を失う不自由な生活」への入り口ではなく「痛みから解放され、再び前を向くためのリスタート」です。
当院では、手術の手技だけでなく、術後のリハビリやご家族の心のケアまで、全力でサポートさせていただきます。もし今、愛犬の足のことで悩まれているなら、ひとりで抱え込まずにぜひご相談ください。
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