スタッフブログ
2026.08.21
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)で手術を勧められ、「どのような手術をするのだろう」「いくつか方法があるようだけれど、何が違うのだろう」と不安を感じている飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
パテラの手術には、すべての犬に共通するひとつの方法があるわけではありません。膝蓋骨が外れやすくなっている原因や骨の形、膝の状態はその子によって異なるため、必要な処置を見極め、複数の術式を組み合わせて行うこともあります。
今回は、犬のパテラ手術で行われる代表的な術式とそれぞれの役割、どのように治療方法を選択するのかについて解説します。
■目次
1.パテラ手術はどんなときに検討するの?
2.パテラ手術で行われる主な術式
3.手術後の回復を支えるために
4.まとめ|膝の状態を丁寧に確認し、必要な術式を選択します
パテラは、膝のお皿にあたる膝蓋骨が、本来収まっている位置から外れてしまう病気です。
症状が軽く、普段の生活にほとんど支障がない場合には、体重管理や運動量の調整を行いながら経過を見守ることもあります。一方、脱臼を繰り返して膝への負担が続く場合や、痛み・歩き方の変化が目立つ場合には、手術を検討することがあります。
例えば、次のような様子が見られる場合です。
・後ろ足を頻繁に浮かせる
・スキップするような歩き方を繰り返す
・膝を痛がる様子が続いている
・以前より歩きづらそうにしている
・成長に伴って足や膝の変形が進んでいる
ただし、これらの症状があるからといって、必ず手術が必要になるわけではありません。脱臼の程度のほか、症状が表れる頻度や年齢、骨の成長、日常生活への影響なども確認しながら、その子にとって手術が適しているかを判断します。
「今すぐ手術をした方がよいのか」「しばらく経過を見てもよいのか」と迷う場合も、まずは動物病院で現在の膝の状態をきちんと確認しておくことで、今後の見通しを立てやすくなります。
パテラ手術では、外れた膝蓋骨を元の位置へ戻すだけではなく、再び外れにくい状態を目指して、骨の形や膝周囲の組織を整えます。代表的な術式には、次のようなものがあります。
膝蓋骨は、大腿骨にある「滑車溝」と呼ばれる溝の中を上下に動いています。ところが、この溝が浅いと膝蓋骨が安定せず、左右へ外れやすくなります。
滑車溝形成術では、膝蓋骨が収まる溝を適切な深さに整え、膝の曲げ伸ばしに合わせて安定して動ける状態を目指します。
単に溝を深くすればよいわけではなく、関節の表面をできるだけ保ちながら、その子の膝に合った形へ整えることが大切です。
膝蓋骨は、靭帯を通してすねの骨につながっており、太ももの筋肉から膝蓋骨、すねの骨までが、できるだけ一直線に並ぶことで安定して動きます。
この並びがずれている場合には、靭帯が付着している「脛骨粗面(けいこつそめん)」という骨の一部を移動させ、膝蓋骨を引っ張る力の向きを調整します。
力のかかる方向を整えることで、膝蓋骨が本来の位置を通りやすくなり、外れにくい状態を目指す術式です。
パテラでは、骨の形だけでなく、膝蓋骨の周囲にある関節包や筋肉、靭帯などのバランスが崩れていることもあります。
例えば、膝蓋骨が外れる側の組織が縮み、反対側が緩んでいる場合には、縮んでいる側を緩めたり、緩んでいる側を引き締めたりして、膝蓋骨を中央へ保ちやすい状態に整えます。
骨に対する処置だけでは十分な安定が得られない場合に、ほかの術式と組み合わせて行われることがあります。
パテラでは、滑車溝の浅さ、骨の並び、膝周囲の組織の偏りなど、複数の要因が重なって膝蓋骨が外れやすくなっていることがあります。その場合は、ひとつの術式だけに限らず、例えば滑車溝形成術と脛骨粗面転位術、軟部組織への処置などを組み合わせて、膝全体のバランスを整えます。
一方で、すべての犬に複数の術式が必要になるわけではありません。脱臼する方向や頻度、骨の変形、成長段階、歩き方への影響などを確認し、必要な処置だけを選択します。
同じ程度のパテラと診断されていても、実際の膝の状態は一頭ずつ異なります。そのため、歩き方や触診、レントゲン検査などを通して、膝蓋骨がなぜ外れやすくなっているのかを詳しく確認することが重要です。その子の膝で起きている問題に合った処置を選ぶことが、膝の安定と機能の回復につながります。
パテラ手術後は、処置した骨や膝周囲の組織が安定するまでの間、膝に無理な負担をかけずに過ごす必要があります。ただ安静にするだけでなく、回復段階に合わせて体の使い方や筋力を戻していくことも大切です。
🔶 手術した足を急に使わせすぎない
手術後は、元気そうに見えても膝の内部はまだ回復の途中です。走る、ジャンプする、急に方向転換するといった動きは避け、獣医師に指示された範囲で活動量を調整します。
🔶 膝を使いやすい環境を整える
滑りやすい床では足が横へ流れ、膝に余計な力がかかることがあります。マットを敷く、段差を減らすなど、安定して立ったり歩いたりできる環境を整えましょう。
🔶 歩き方の変化を見守る
手術後は、しばらく手術した足をかばうこともあります。少しずつ足を使えるようになっているか、反対側の足へ負担が偏っていないかなど、日々の歩き方を見ておくことが大切です。
🔶 診察を受けながら運動量を調整する
回復の速さは犬によって異なります。診察で膝の安定性や足の使い方を確認しながら、散歩や運動を再開する時期を調整していきます。
手術後の生活について不安がある場合は、「どこまで動かしてよいか」「この歩き方で問題ないか」といった小さな疑問でも、診察時に確認しておくと安心です。
整形外科手術後の在宅ケアについてはこちらで解説しています
整形外科手術後の運動制限についてはこちらで解説しています
整形外科疾患の再発予防についてはこちらで解説しています
犬のパテラ手術では、さまざまな術式があります。どの術式を選ぶかは、脱臼の程度だけでなく、骨の形や膝周囲の組織、歩き方への影響などを総合的に評価して判断します。ひとつの術式で対応できる場合もあれば、複数の処置を組み合わせる場合もあり、大切なのはその子の膝に必要な治療を見極めることです。
京都北山動物病院では、歩き方や膝の動き、画像検査の結果などを丁寧に確認し、現在の状態や治療の選択肢について分かりやすくご説明しています。「手術が必要と言われたけれど、今受けるべきか迷っている」「どのような術式になるのか詳しく聞きたい」といった段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。
◼︎関連する記事はこちら
犬が散歩を嫌がる・途中で座るのはなぜ?痛みのサインと受診の目安を解説
犬が階段を嫌がるのはなぜ?膝・股関節・腰のサインと受診のポイント
犬が足を引きずる原因とは?整形外科疾患と神経疾患の違いや、受診の目安を解説
犬や猫は痛みを隠す?見逃したくない痛みのサインと疼痛管理について
愛犬が足をかばう時の病気と対策|整形外科疾患の判断ポイント
京都市左京区 北山駅から徒歩5分、松ヶ崎徒歩7分 京都北山動物病院
℡:075-744-6188