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2026.06.26
犬や猫は、私たちのように「ここが痛い」と言葉で伝えることができません。そのため、痛みがあっても飼い主様が気付けず、症状が進行してから初めて異変に気付くケースも少なくありません。
特に猫は、体調不良や痛みを隠す傾向が強い動物として知られています。また、犬でも慢性的な痛みの場合は変化が分かりにくく、以前より動きたがらなくなったり、寝ている時間が増えたりしていても、「年齢のせいかな」「最近落ち着いただけかな」と見過ごされてしまうことがあります。
今回は、犬や猫が見せる痛みのサインや考えられる原因、そして現代の獣医療における疼痛管理について解説します。
■目次
1.犬や猫はどんなサインで痛みを伝える?
2.痛みの原因にはどんなものがある?
3.現代の獣医療における疼痛管理
4.絶対にやってはいけないこと
5.まとめ|小さな変化が痛みのサインかもしれません
犬や猫は、野生で生活していた頃の本能から、弱っていることを周囲に悟られないようにする傾向があります。特に慢性的な痛みでは、少しずつ症状が進行するため、飼い主様も変化に気付きにくいことがあります。
また、普段通り食事をしていたり、尻尾を振ったりしているからといって、必ずしも痛みがないとは限りません。そのため「元気そうだから大丈夫」と判断せず、日頃の様子の変化に目を向けることが大切です。
犬では、次のような変化が見られることがあります。
・歩き方がいつもと違う
・散歩を嫌がる
・抱っこや体を触られるのを嫌がる
・震える
・「キャン」と鳴く
・落ち着きがなくなる
・寝る姿勢を頻繁に変える
・階段や段差を嫌がる
整形外科疾患では、歩き方や動き方の変化として表れることが多く見られます。また、痛みが強い場合には食欲低下や元気消失につながることもあります。
猫では、犬よりもさらに変化が分かりにくい傾向があります。
・高い場所に登らなくなった
・隠れて過ごす時間が増えた
・グルーミング(毛づくろい)の回数が減った
・特定の場所ばかり舐める
・食欲が落ちた
・活動量が減った
・トイレの失敗が増えた
これらは「年齢のせいかな」と思われがちな変化ですが、実際には関節の痛みや内臓疾患などが隠れている場合もあります。
犬や猫の痛みにはさまざまな原因があり、原因によって必要な治療やケアも異なります。そのため、まずは原因を見極めることが大切です。
🔶 整形外科疾患による痛み
整形外科疾患は、犬や猫が痛みを抱える原因として非常に多く見られます。
例えば、変形性関節症、膝蓋骨脱臼(パテラ)、前十字靭帯断裂、骨折後の痛みなどでは、関節や骨に負担がかかることで痛みが生じます。特にシニア期では、加齢に伴う関節の変化によって慢性的な痛みが続くケースも少なくありません。
変形性関節症についてはこちらで解説しています
膝蓋骨脱臼(パテラ)についてはこちらで解説しています
前十字靭帯断裂についてはこちらで解説しています
🔶 神経疾患による痛み
椎間板ヘルニアや脊髄疾患など、神経の異常によって痛みが生じることもあります。
神経由来の痛みでは、歩き方の異常や麻痺などを伴うケースも見られます。
犬の椎間板ヘルニアについてはこちらで解説しています
猫の脊髄疾患についてはこちらで解説しています
🔶 その他の病気による痛み
痛みの原因には、がん、歯周病などの口腔疾患、膀胱炎などの泌尿器疾患、消化器疾患などが関係していることもあります。
このように痛みの原因はさまざまですが、慢性的な痛みが続くと活動量の低下や食欲低下につながり、その子らしい生活を送ることが難しくなる場合があります。そのため、近年の獣医療では「痛みを我慢させないこと」が重要視されています。
近年の獣医療では、痛みは「我慢させるもの」から「適切にコントロールするもの」という考え方へ変わってきています。
もちろん、すべての痛みを完全になくせるとは限りません。しかし、痛みを和らげることで活動しやすくなったり、食欲が改善したりするなど、その子らしい生活を維持できる可能性があります。
つまり、疼痛管理の目的は単に痛みを減らすことではなく、生活の質(QOL)を保つことにあるとも言えます。
痛みの原因や程度はそれぞれ異なるため、動物病院ではその子の状態に応じて、次のようなさまざまな方法を組み合わせながら疼痛管理を行います。
・鎮痛薬による痛みのコントロール
・リハビリテーション
・レーザー治療などの補助療法
・体重管理のサポート
・生活環境に関するアドバイス
近年は、一つの治療だけに頼るのではなく、複数の方法を組み合わせて痛みを管理する考え方が一般的になっています。
疼痛管理では、ご家庭での環境づくりや日々のケアも大切な要素です。例えば、次のような取り組みは、痛みの軽減や再発予防につながります。
・滑りにくい床環境を整える
・適正体重を維持する
・無理のない範囲で運動を続ける
・快適に休める寝床を用意する
・日々の様子を観察する
また「今日はいつもより動きたがらない」「ここ何日か高い場所に登らなくなった」などの変化に気付くことも重要です。飼い主様だからこそ気づける小さな変化が、病気や痛みの早期発見につながる場合があります。
愛犬や愛猫に痛みがありそうな様子を見ると、少しでも楽にしてあげたいと思う飼い主様も多いかもしれません。しかし、中にはかえって状態を悪化させてしまう対応もあるため注意が必要です。
人間用の痛み止めを犬や猫に与えることは非常に危険です。
例えば、ロキソニンやカロナールといった解熱鎮痛薬は、犬や猫に重篤な中毒を引き起こすおそれがあります。特にアセトアミノフェン(カロナールなどに含まれる成分)は、猫では命に関わる中毒を引き起こすことがあります。
痛みがあるように見えても、人用の薬を与えることは絶対に避け、必ず動物病院へ相談してください。
処方された薬についても「元気そうだからもう飲ませなくていいかな」「痛そうだから量を増やそう」といった自己判断は避けましょう。
薬の種類によっては、急な中止や過剰投与によって体調に影響を及ぼすことがあります。使用方法について不安がある場合は、必ず主治医へ相談するようにしてください。
サプリメントや補助療法は、疼痛管理のサポートとして役立つ場合があります。しかし、痛みの原因そのものが解決しているとは限りません。症状が続く場合や変化が見られる場合は、早めに診察を受けることが大切です。
犬や猫は痛みを隠すことがあり、普段の行動の小さな変化が痛みのサインとなっている場合があります。適切な疼痛管理は、痛みを和らげるだけでなく、その子らしい生活を維持し、生活の質(QOL)の向上にもつながります。
京都北山動物病院では、整形外科疾患をはじめ、神経疾患やシニア期の慢性的な痛みなど、さまざまな痛みに対する診療・疼痛管理を行っています。
「以前より動かなくなった」「年齢のせいか迷っている変化がある」など、気になることがありましたらお気軽にご相談ください。
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