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2026.10.22
「最近、愛犬が後ろ足を少し引きずって歩いている」
「かかとのあたりの形が、以前と違うように見える」
このような変化に気づいて、そのまま様子を見てよいのか迷う飼い主様もいらっしゃるでしょう。
後ろ足の歩き方に異常が出る原因のひとつが、浅趾屈筋腱脱臼(せんしくっきんけんだっきゅう)という病気です。ほかの整形外科の病気と症状が似ているため、見つけにくいことがあります。
今回は、犬の浅趾屈筋腱脱臼について、飼い主様が気づけるサインから、検査・診断、手術による治療までを解説します。
■目次
1.浅趾屈筋腱脱臼とはどのような病気?
2.飼い主様が気づけるサイン
3.ほかの病気と見分けにくい理由
4.動物病院で行う検査と診断の流れ
5.治療の考え方
6.まとめ|後ろ足の跛行が続くときはご相談ください
犬の後ろ足には、人のかかとにあたる「飛節」という関節があります。浅趾屈筋腱は、後ろ足を通って飛節の後ろ側から足先へとのびる腱で、飛節や足先の動きに関わっています。
この腱は、かかとの骨の先端にある浅い溝の上に収まり、両脇を支帯と呼ばれる帯状の組織で留められています。支帯が傷んだり裂けたりして、腱が溝から外れて内側または外側へずれた状態が浅趾屈筋腱脱臼です。
腱がずれる方向は外側が多く、両方の後ろ足に起こることもあります。
浅趾屈筋腱脱臼には、生まれつきの骨格の特徴や、日常生活のなかで飛節に加わる負担など、いくつかの要因が関係すると考えられています。
🔶生まれつきの要因
シェットランド・シープドッグやコリーで多く報告されているほか、かかとの骨の溝が浅いなど、踵骨の形が関係することがあります。
🔶後天的な要因
運動時に繰り返しかかる負担や肥満、外傷などによって、飛節やその周囲に負担がかかることが関係する場合があります。
ただし、これらの要因がなくても浅趾屈筋腱脱臼を発症する場合があります。
浅趾屈筋腱脱臼では、歩き方や飛節に次のような変化が表れる場合があります。左右の後ろ足を並べて見比べると、変化に気づきやすいでしょう。
・後ろ足を引きずる、または浮かせて歩く
・運動のあとに、足をかばう様子が強くなる
・かかとの周りが腫れている、左右でかかとの形が違う
・かかとを触られるのを嫌がる
跛行の程度は、軽いものからはっきり足をかばうものまでさまざまです。
また、腱が外れた直後は痛みや腫れが目立っても、しばらくすると落ち着き、普段どおりに歩けているように見える時期があります。このように腱が外れたり戻ったりを繰り返す場合もあり、「よくなったから様子を見よう」と判断されやすい病気です。
跛行が続くときや繰り返すときは、症状が軽く見えても一度診察を受けてください。
後ろ足の跛行は、次に挙げるようなさまざまな病気でも見られる症状です。
・膝蓋骨脱臼(パテラ):後ろ足を浮かせる、スキップのような歩き方をする
・アキレス腱を傷めた場合:かかとが下がり、地面にかかとを着けるような歩き方になる
・前十字靭帯断裂:足先だけを地面に着ける、足を浮かせて歩く
そのほか、股関節の病気や神経の病気などでも、後ろ足を引きずる様子が見られます。
浅趾屈筋腱脱臼も同じように後ろ足の跛行が症状として表れるため、歩き方を見ただけで区別するのは難しい病気です。症状が落ち着いている時期には飛節の腫れも目立たず、診察のタイミングによっては見つかりにくいこともあります。
そのため、飛節を直接触って腱の位置や動きを確かめる触診と、画像検査を組み合わせて、ほかの病気と区別することが大切です。
当院でも、「後ろ足の跛行が続き、原因を確かめたい」と来院した犬に対し、飛節の触診などから浅趾屈筋腱脱臼が疑われ、検査・診断を経て手術を行ったケースがあります。
犬のパテラ(膝蓋骨脱臼)についてはこちらで解説しています
犬の前十字靭帯断裂についてはこちらで解説しています
浅趾屈筋腱脱臼が疑われる場合には、まず飼い主様から「いつから歩き方が変わったのか」「症状が続いているのか、良くなったり悪くなったりするのか」「運動のあとに変化が目立つのか」などのお話を伺います。
受診時には、歩き方が普段どおりに戻っていることもあります。気になる歩き方が見られたときは、ご家庭で動画を撮っておくと診察時の助けになります。
🔶視診・触診
立っているときの姿勢や歩き方を観察し、どの足をかばっているかを確認します。そのうえで飛節を触り、腫れや左右差を確かめます。
腱がかかとの骨の上から外れる動きを指先で確認できることがあり、診断の手がかりにします。
🔶画像検査
レントゲン検査では腱そのものは写りにくいものの、かかとの骨の形や骨折の有無を確認し、骨の病気が跛行の原因になっていないかを調べます。
超音波検査では、腱が外れている方向や、腱そのものに損傷がないかを確認します。
なお、検査は症状や触診の結果に応じて選ぶため、すべてを毎回行うとは限りません。
浅趾屈筋腱脱臼では、包帯や安静などの保存的な方法だけでは腱を元の位置に保つことが難しいとされています。状態に応じて整形外科手術による治療を検討します。
手術では、ずれた腱を元の位置に戻し、裂けた支帯を縫い合わせて腱を留め直します。
このように、腱を本来の位置へ戻す「整復」と、損傷した支帯を修復・再建して腱を安定させる処置を行います。
かかとの骨の溝が浅い場合には、溝を整えて腱が外れにくくする処置を組み合わせる場合もあり、どの処置を行うかは、腱の状態やかかとの骨の形を確認したうえで判断します。
手術後は、術式や腱・周囲組織の状態に応じて、副木やギプスなどで飛節を一定期間固定することがあります。
その後は回復の様子を確認しながら、段階的に運動を再開していきます。元の活動量に戻るまでには数か月を要する場合もあり、回復までの期間は手術内容や状態によって異なります。
腱が外れた状態が続くと、跛行が長引いたり、飛節の周りで炎症が続いて組織が厚くなったりするおそれがあります。
時間がたつにつれて周囲の組織に変化が生じ、手術で腱を本来の位置に戻して安定させることが難しくなる場合もあります。
浅趾屈筋腱脱臼は、かかとの部分で腱がずれる病気です。後ろ足に表れる症状は、ほかの病気と似ているように見えることに加え、症状が落ち着く時期もあるため、気づきにくい病気のひとつです。
跛行が続く場合や、良くなったり悪くなったりを繰り返す場合、かかとの形に左右差がある場合は、動物病院を受診してください。
京都北山動物病院では、歩き方の観察と触診、必要に応じた画像検査を組み合わせて、跛行の原因を確かめています。
長引く跛行のほか、検査を受けても原因がはっきりしない場合のセカンドオピニオンについてもお気軽にご相談ください。
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